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新4年生の皆さんへ(2017年度版)

このメッセージは府大の電気電子システム工学課程新4年生に向けてまとめたものです。他大学で我々のグループに興味ある方にも参考になると思います。

我々,電力システム研究グループ(グループ2)では,電力・エネルギーシステムの解析,制御,最適化,モデリング,計測などの教育・研究を行っています。3名の教員を含めて31名の大所帯の研究グループです。

卒業研究の学生としてグループ2に配属された場合,各学生は3名の内1名の教員の下で卒業研究に取り組むことになります。各学生に対して1つの独立した研究テーマが与えられます。研究の進め方は,関連する研究テーマの学生(同級生,先輩)とチームを構成する場合もあれば,教員と学生のマンツーマンで進める場合もあります。これはテーマの性格・状況と学生さんの個性・資質を見て担当教員が判断します。研究へのアプローチは,シミュレーション,理論,実験の全てが可能性としてあり,テーマに応じて何を採用するかを決めていきます。

グループ2の教育・研究の特徴として「多様な機会の提供」があります。教員3名の出身大学,研究経歴は全く異なります。大学院生には府大以外の出身の学生さんが複数在籍し,海外の研究者も滞在します(実績:North Carolina State Univ.,Univ. New Mexico,Virgia Tech;予定:UC Santa Barbara,Grenoble Tech,Univ. Namur)。これらは,皆さんの研究活動を多様な観点や価値観から指導し議論する機会形成につながります。グローバル化を安易に引用するのは良くないですが,多様な経歴や価値観を有するメンバーに対して,自分の研究テーマや結果を説明し,議論し,納得させていく能力は,社会に出てから今後益々必要になるものです。特に,海外研究者の滞在は数日から数週間と短期の場合が多いものの,短期間でも海外研究者と議論する機会はとても有益です。英会話が上達すること(英会話が必要と痛感すること?)は言うまでもありません。また,教育的見地から良い経験になると判断する場合には,企業や国内外の研究機関との共同研究に参加する機会を設けています。さらに,グループ2では,国内外の研究者によるセミナーを開催し,電力・エネルギーシステムに関わる広い知識について学習する機会を提供しています(実績はこちら)。昨年度からは電力・エネルギーシステムを実地で学習する見学会も設けています(昨年度の様子はこちら)。

グループ2の他の特徴として「自由」であることを府大の学生・卒業生からよく聞きます。学生さんが自らのアイデアで研究活動を進めていく。このような知的活動の自由は大学において絶対に守らないといけないものです。3名の教員はそのための努力を惜しみませんし,学生さんの活動を最大限サポートします。ただ,自由には責任が伴うことも理解して欲しいと思います。自由だからといっても,同じグループで研究活動を行っている以上,過度に自分本意の行動(昼夜逆転したライフスタイル,平日のコアタイムに研究室に居ない,教員の指示や指導を理由もなく尊重しない等)は,常に議論する環境を形成していくというグループ2の考えに反します。また,あくまで研究を行うグループですから,能力は別にして意欲がない学生は歓迎されません。卒業研究で配属されたグループで研究自体を行わない自由は学生諸君にはありません。

電力・エネルギーシステム分野は,従来の所謂「電力系統工学」から大きく展開し,エネルギーを扱う様々なスケールの複合システム(System of Systems)を系統的にデザインする学問として今後発展していくと考えています。このような分野では,従来の系統工学にある方法論に留まらず,システム理論,オペレーションズリサーチ,データサイエンス,コンピュータサイエンス,応用数学等の先端的成果を学習し,次世代エネルギーシステムのデザインに応用していくことが求められます。2017年度の卒業研究のキーワードは以下の通りで,従来の電力系統工学に留まっていないことが理解できると思います。

  • 医療施設の温水供給
  • 強化学習による電圧制御
  • 風力発電
  • ビル・エネルギー管理
  • 配電系統
  • 送配電シミュレーション
  • 同期フェーザ計測

世の中の研究や技術開発のスピードはとても速く,それに追いついていくだけで大変です。研究の現場に入り,国内外の学会や各種プロジェクトに参加すると,これらのことは痛感されると思います。そのような中で,次世代のエネルギーシステムのデザインに向けて,ユニークで重要でかつおもろしい研究を展開しようと,グループ2は日々取り組んでいます。このことは,にぎやかな東京から離れた大阪,静かな環境・キャンパスを有する大阪府立大学だからこそ可能です。必ずしも社会のニーズや経済性にとらわれない自由な知的活動を通して自分を高める。このことが可能な唯一の場所が大学です。この観点で,意欲と資質のある学生には博士後期課程への進学をグループ2として推奨しています。

最後に,3年生の皆さんが研究グループの配属を考えるにあたっては,グループを実際に見学し,ラボ,環境,メンバー(教員,学生)に触れることが大切と思います。2017年度も分野のイベントとして,博士前期課程1年生のポスター発表会があり,その機会にグループ2の研究内容を知ることができます。メンバーとラボは常にオープンですので,3年生の皆さんは積極的にアクセスして下さい(別のアポイントメントがあり対応できない場合は許して下さい)。

グループ2の教員・先輩と共に切磋琢磨したい,元気な学生さんの参加を待っています!

グループ2・教員一同(文責:薄良彦,2017年11月30日)