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新4年生の皆さんへ(2021年度版)

2020年度は,ほとんどオンライン形式の講義となりましたので,教員は直接話をする機会をあまり持てず,大変残念な1年でした。3月初めの研究グループ紹介に関連して,こちらのホームページを通して,府大の電気電子システム工学課程新4年生に向けたメッセージを送ります。他大学で我々のグループに興味ある方にも参考になると思います。

電力システム研究グループ(Gr.2)では,電力・エネルギーに関わるシステム解析,制御,最適化,モデリング,計測などの教育・研究を行っています。3名の教員を含めて32名の研究グループです。

卒業研究の学生としてGr.2に配属された場合,各学生は3名の内1名の教員の下で卒業研究に取り組むことになります。各学生に対して1つの独立した研究テーマが与えられます。研究の進め方は,関連する研究テーマの学生(同級生,先輩)とチームを構成する場合もあれば,教員と学生のマンツーマンで進める場合もあります。これはテーマの性格・状況と学生さんの個性・資質を見て担当教員が判断します。研究へのアプローチは,シミュレーション,理論,実験の全てが可能性としてあり,テーマに応じて何を採用するかを決めていきます。

Gr.2の教育・研究の特徴として「多様な機会の提供」があります。教員3名の出身大学,研究経歴は全く異なります。大学院生には海外出身の学生さんや社会人ドクターが複数在籍します。また,例年,海外の研究者も訪問・滞在しますが,2021年度も難しいと思います(訪問•滞在実績:North Carolina State University,University of New Mexico,Virgia Tech,UC Santa Barbara,University of Namur,SINTEF Energy Research,Fraunhofer IEE)。これらは,皆さんの活動を多様な観点や価値観から指導し,議論する機会の形成につながります。多様な経歴や価値観を有する研究グループのメンバーや研究者に対して,自分の研究を説明し,議論し,納得させていく能力は,社会にて出てから今後益々必要になるものです。特に,海外研究者の滞在は数日から数週間と短期の場合が多いものの,短期間でも海外研究者と議論する機会はとても有益です。英会話が上達すること(英会話が必要と痛感すること?)は言うまでもありません。また,教育的見地から良い経験になると判断する場合には,企業や国内外の研究機関との共同研究に参加する機会を設けています(海外への派遣実績:SINTEF Energy Research,UC Santa Barbara)。さらに,Gr.2では,国内外の研究者によるセミナーを開催し,電力・エネルギーシステムに関わる広い知識について学習する機会を提供しています(実績はこちら)。2019年度までは毎年,電力・エネルギーシステムを実地で学習する見学会も設けていました(これまでの様子はこちら)。

Gr.2の他の特徴として「自由」であることを府大の学生・卒業生からよく聞きます。学生さんが自らのアイデアで研究活動を進めていく。このような知的活動の自由は大学において絶対に守らないといけないものです。3名の教員はそのための努力を惜しみませんし,学生さんの活動を最大限サポートします。ただ,自由には責任が伴うことも理解して欲しいと思います。自由だからといっても,同じグループで研究活動を行っている以上,過度に自分本意の行動(昼夜逆転したライフスタイル,教員の指示や指導を理由もなく尊重しない等)は,常に議論する環境を形成していくというGr.2の考えに反します。また,あくまで研究を行うグループですから,能力は別にして,研究に必要な勉強への意欲がない学生は歓迎されません。卒業研究で配属されたグループで勉強しない自由は学生諸君にはありません。

電力・エネルギーに関するシステム分野は,従来の所謂「電力系統工学」から大きく展開し,エネルギーを扱う様々なスケールの複合システム(System of Systems)を系統的にデザイン(設計)する学問として今後発展していくと考えています。このような分野では,従来の系統工学にある方法論に留まらず,システム理論,オペレーションズリサーチ,データサイエンス,コンピュータサイエンス,応用数学,行動経済学,材料化学等の先端的成果を学習し,次世代のエネルギーに関わるシステムデザインに応用していくことが求められます。2020年度の卒業研究のキーワードは以下の通りで,従来の「電力系統工学」に留まっていないことが理解できると思います。

  • 風力発電の収益性
  • P2P(Peer-to-Peer)電力取引と環境価値
  • クープマンモード分解と交流・多端子直流システム
  • 強化学習と電圧制御
  • 確率計画法と風力発電の運用
  • 全固体電池のシミュレーション
  • マイクロPMUによる計測とデータ分析
  • 形式手法と温水供給システム

世の中の研究や技術開発のスピードはとても速く,それに追いついていくだけで大変です。研究の現場に入り,国内外の学会や各種プロジェクトに参加すると,これらのことは痛感されると思います。そのような中で,次世代のエネルギーに関わるシステムデザインに向けて,ユニークで重要でかつおもしろい研究を展開しようと,Gr.2は日々取り組んでいます。このことは,にぎやかな東京から離れた大阪,静かな環境・キャンパスを有する大阪府立大学だからこそ可能です。必ずしも社会のニーズや経済性にとらわれない自由な知的活動を通して自分を高める。このことが可能な唯一の場所が大学です。この観点で,意欲と資質のある学生には博士後期課程への進学をGr.2として推奨しています。

Gr.2の教員・先輩と共に切磋琢磨したい,元気な学生さんの参加を待っています!

(文責:薄.2021年3月1日掲載)